2013年06月26日

動態的憲法研究のまえがき

日本は、昨年12月の衆議院選挙で誕生した自民党安倍新内閣の下で、2011年3月11日の東日本大震災に端を発した混迷と災厄の時代を抜け出し、ようやく本格的再生の時代に突入したように思われる。
動かない政治が動き出した。
決められない政治が決める政治になってきた。
長らく不透明だと言われてきた時代が、少しだけ先が見透せるようになってきた。
そういう時に、「動態的憲法研究」という名を冠した新しい本を上梓することになった。
動態的憲法研究は、憲法判例の研究でも、比較憲法研究でも、さらには憲法制定史の研究でもない。
もちろん憲法典の解釈学でもない。
私たちの目の前にある、あらゆる憲法事象について総合的に考察しようというのが私たちの言う動態的憲法研究である。憲法政策学、憲法政治学、憲法社会学という名前の方がよりふさわしいかも知れないが、私たちはあえて動態的憲法研究と呼んでいる。

この本で取り上げられているテーマは、昨年12月に発足した動態的憲法研究会で取り上げられた最近の日本の憲法事象に関わるものばかりである。
動態的憲法研究会は、既に回を重ねて26回目になっている。
この本が書店に並ぶ頃には優に30回を超えていると思われるが、この本に書かれている内容は、昨年の12月頃から本年6月までの間に戦わされてきた国会の内外における様々な憲法論議を色濃く反映したものになっているはずである。

憲法を語ることは、現在の日本の政治を語ることであり、すなわち「日本」を語ることである。
この書を読めば、今の日本の政治状況、憲法を取り巻く状況が手に取るようにお分かりになるはずである。
これまで憲法は、一人一人の国民にとって実に遠い存在だったと思う。
多くの国民は憲法を語ることに倦んでおり、憲法論議にはいささか食傷気味だったのではないかと思われる。
しかし、ここに来て、憲法が多くの国民にとってずいぶん身近な存在に感じられるようになったはずだ。

憲法改正についての賛否はさておき、憲法について国会議員もマスコミもさらには一般の国民も実によく語るようになってきた。
憲法改正を唱える声が高まるとともに、憲法改正を阻止しようという声もまた大きくなっている。
憲法を語らない時代から、憲法を語る時代に転換したと言っていいだろう。
そういう時代背景の中で上梓されるのが、この「動態的憲法研究」である。
この本の中には、現在の日本の政治状況、すなわち現在の「日本」がギッシリと詰まっている。

既に憲法の制定から67年、施行から66年の歳月が流れている。
これまでも様々な憲法論議が展開されてきたが、この間憲法改正についての国民的合意は一向に形成されず、これまでの憲法論議はすべて国民に何も齎さない不毛のものに終わっていた。
しかし、今や日本の政治状況は大きく変化している。
これまでは憲法改正の発議条件を満足させるような政治的状況が現出しなかったこともあって、一度も憲法改正の発議がなされてこなかったが、この度の参議院選挙の結果次第では、いよいよ憲法改正の発議がなされるかも知れない。

憲法改正に向けて日本がまさに大きく一歩前に足を踏み出そうとしている、と言っていいだろう。
こういう時に、衆議院の憲法調査会委員等を務めたことのある自民党の元衆議院議員がどういうことを言うか、さらに、民主党の衆議院議員の政策秘書を務めたことがあり、衆議院及び参議院の憲法調査特別委員会の公聴会で公述人を務めたこともある、『Q&A解説・憲法改正国民投票法』という著作もある憲法研究者がどういうことを言うか、を知ることにはそれなりの意義があるはずだ。

本書の序章と第三章は慶応義塾大学大学院法学研究科で憲法を講じている南部義典が担当し、第二章は衆議院憲法調査会、衆議院憲法調査特別委員会の委員を務めたことがある元衆議院議員で元東京弁護士会副会長の弁護士早川忠孝が担当した。

それぞれの書きぶりは大きく異なるが、訴えていることは基本的に共通している。
憲法改正についての国民的合意の形成に努めよ。
憲法改正手続き条項の改正のみを先行させるような姑息なことはしてはならない。
憲法改正国民投票法の制定時に定められた3つの宿題は、ちゃんと片付けるべし。

簡単なことだ。

なお、早川は、これまでPHPパブリッシング社から「天女との語らい」シリーズ全4巻、「早川忠孝の先読みライブラリー」本巻全6巻、別巻全4巻を出版してきたが、本書はビヨンドXプロジェクト「時を刻む」シリーズの第1巻として発行することとした。
これからも、それぞれの時代を色濃く反映するようなテーマを選んで、発信を続けていく所存である。

平成二五年六月吉日
  
    動態的憲法研究会代表 早川 忠孝
posted by 憲法フォーラム at 22:48| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。