2013年09月19日

こんな提言を考えているが、如何かー選挙運動法制の見直しに関する提言試案


9月24日(火)午後6時から動態的憲法研究会と新しい選挙制度研究会を開催することになっている。

昨年の12月から開催してきた研究会だが、そろそろ締め括りをした方がよさそうだ。

節目がない活動は、大体何も産まない。
節目がない「時間」というものにあえて節目を付けるのが人間の知恵だろうと思っている。

何にでも期限を設けることで、メリハリを付ける。

これが、私の仕事をするときのスタイルである。
動態的憲法研究会も新しい選挙制度研究会もまもなく幕を閉じることにする。

ここらあたりで何らかの成果を出してみたい。

動態的憲法研究会では「動態的憲法研究」という本の出版をしたから、これはこれでいいだろう。
さて、新しい選挙制度研究会はどうするか。

今検討しているのは、選挙運動法制についての見直しに関する提言の取り纏めである。
この提言には、読者の皆さんのご意見も出来るだけ反映していきたいと考えている。
皆さんの忌憚のないご意見を頂戴できれば幸いである。

「選挙運動法制の見直しに関する提言試案

( 提 言 )選挙運動法制に関する見直しについて(試案)

T.公職選挙法の一部改正(平成25年4月26日法律第10号)に伴い、第23回参議院通常選挙から、インターネットを活用した選挙運動が初めて容認された。

わが国では従来、選挙運動を行う候補者・政党等と投票する側に立つ有権者が、いわば運動する人としない人、情報の送り手と受け手として「主・客」分離状態に置かれ、一方通行型の選挙運動が展開されてきた。しかし今回、有権者の側もインターネットを活用した選挙運動を行うことが可能となり、「主・客」の立場は世代を超えて融合し、双方向・多極型の選挙運動が現実のものとなった。

今後も、インターネットをいかに活用していくべきか、選挙実務者、インターネット関係業界、ユーザーを中心にその実用研究がいっそう深化し、新たな運動態様の模索と選挙運動法制の改革に結実することを願ってやまない。

U.今回の公職選挙法改正は、「インターネット選挙運動等に関する各党協議会」が本年2月以降、精力的に議論を行った成果を踏まえ、超党派の議員立法として全会一致で成立したものである。

この点、選挙という民主政治の根幹に関する法制度は、因習や固定観念にとらわれず、有権者の目線で、不断に見直しを行うことが必要である。とくに立法事実が薄弱で、横並びで「痩せ我慢」を強いるような選挙運動法制は、民主政治の健全な発展を大きく阻害する。党利党略を超えて、各党が真摯な合意形成を図り、時代に即した見直しが常に行われなければならない。各党協議会の体制を維持し、有意な協議が継続されることに期待したい。

もっとも、インターネットを活用した選挙運動の範囲拡大は重要な課題ではあるものの、議論はその分野に限られない。今回の法改正では対象とならなかった(文書・ポスター・看板を基本ツールとする)古典的な選挙運動規制についても、各党協議会その他の協議の枠組みで根本から見直し作業を行うとともに、必要な法改正と運用の改善と合理化を進めるべきである。

V.巷で言われているとおり、今後3年近く国政選挙が行われる見通しがない。我々もほぼ同じ認識に立つ。国会においては、各党の利害にとらわれず、落ち着いた政治環境のなかで議論を積み重ねられる絶好の期間となる。

2015年4月には統一地方選挙が実施される予定である。そこで、統一地方選挙を一つのめどとして、本提言項目について検討を行い、各党間の幅広い合意に基づき、必要な法制上の措置が講ぜられることを要望する。

提言1.候補者、政党等以外の第三者による選挙運動用電子メールの解禁

【コメント】
第三者による選挙運動用電子メールが制限された趣旨は、
@密室性が高く、誹謗中傷やなりすましに悪用されやすいこと、
A複雑な送信先規制を課しているため、一般の有権者が処罰され、さらに公民権停止になるおそれがあること、
B悪質な電子メール(ウイルス等)により、有権者に過度の負担がかかるおそれがあること、
と説明されている(各党協議会ガイドラインp11)。

しかし、@Bについては、選挙運動用電子メールに限ったことではなく、SMTP方式及びSMS
方式一般に生じうるリスクである。とくに選挙運動のケースに顕著というわけではない。
Aについては、選挙運動用電子メールは、選挙運動用電子メール送信者に対し電子メールアド
レスを自ら通知した者のうち、(ア)選挙運動用電子メールの送信の求め・同意をした者、(イ)政治活動用電子メール(普段から発行しているメールマガジン等)の継続的な受信者であって、選挙運動用電子メールの送信の通知に対し、送信しないよう求める通知をしなかったものに対してのみ送信できる、とされているところであるが、現時点において複雑な規制であるとまではいえない。

また、日常的に行われる、特定人に宛先を限定した電子メールの送受信では、(第三者による)
選挙運動用電子メールの送信を許容すべき利益が大きい。

そもそも、「選挙の主役は誰か」という観点が重要である。今回の法改正の趣旨は、インターネットを活用する選挙運動の主体が、一般の有権者に拡大したことにある。一般の有権者(第三者)が「国民固有の権利」(憲法15条)としての選挙権を行使する前提として、ウェブサイトの活用はもちろん、電子メールも政治的決定に関与する機会においては重要なツールであることは言う までもない。両者を区別し、その取り扱いに差異を設ける理由は見出し難い。

公選法附則5条2項は、次回の国政選挙までの解禁を示されているが、統一地方選挙に間にあうよう、議論を前倒しして行うべきである。

提言2.政党等以外の第三者による選挙運動用バナー広告の解禁

【コメント】
候補者・政党等の氏名・名称又はこれらの類推事項を表示した選挙運動用有料インターネット広告は、政党その他の政治団体(政党等)に限って認められている。

法改正以前より、政治活動用の有料バナー広告が、大手検索サイト、大手メディア等のウェブサイトに掲載される例がある。政党等には選挙費用の法定上限額も定められておらず、政治活動用の有料バナー広告が公示後も引き続き、選挙運動用の有料バナー広告として掲載されることはありうることであり、現に、先の参議院通常選挙においても多くの政党等が有料バナー広告を選挙期間中に活用した。

有料バナー広告が政党等に制限されているのは、まさに資金力の多寡によって、広告の量が決定されることになるため、私財に富む特定の候補者、特定の第三者(広告主となる個人・団体)の影響が排除できないということが指摘されている。

この点、総量規制を行うなどの方法もあるが、例えば、投票期日前○日前からは、公職の候補者による有料バナー広告を禁止するなどのルールを、業界の自主規制に委ねることも考えられるであろう。候補者、第三者の言論表現の自由に関わる問題でもあり、一律に規制すべきではない。

公選法附則5条2項は、候補者にも拡大する方向性を示しているが、第三者に対する解禁も、検討が加えられるべきである。

提言3.文書図画規制の解禁

【コメント】
従前、選挙運動用のウェブサイトを選挙運動期間中に「更新」することは、選挙運動用文書図画の「頒布」に該り、実務上許されないと解されてきた。しかし、今回の法改正により、立法府自らの手により、古典的な文書図画規制に大きな風穴が空けられたことは言うまでもない。

この際、ビラについては、他の法規に抵触するものでない限り、自由とすべきである。配付主体についても、制限を撤廃すべきである。

たとえば、インターネットを活用した選挙運動が解禁されたことにより、候補者は連日の選挙運動の様子、日々の街頭演説、個人演説会の様子などをウェブ上に掲載することが可能であるが、それを印刷し、街頭演説の場で配付することが許されない。選挙管理委員会に届け出、証紙を貼られたビラで、選挙運動期間中徹しなければならないというジレンマがある。それでは、有権者の感触・反応を適時に探ることもできず、コミュニケーションを図ることが困難である。

衆議院選挙においても、法定ビラ(法142条1項1号及び2項が定めるもの)11万枚のうちほとんどは新聞折り込みで使用され、街頭演説の場で配布されるものはわずかである。選挙運動の実態に鑑みれば、一律に同じ内容(衆議院小選挙区であれば2種類以内)のビラを配り続けるよりは、種類の異なるものを印刷し、対象者(時間帯、場所等)に応じて配布することのほうが、より効果的な選挙運動が可能となろう。さらには、文書図画を記録した電磁的記録媒体(DVD等)の頒布も
可能とすべきである。

通常葉書については、種類に関する規制を撤廃するほか、枚数の上限については、適正な公費負担のあり方から、結論を得るべきである。

紙媒体でありながら、衆議院選挙において候補者届出政党が使用するポスターは、一定程度の時間的継続性を持って掲示されることに意義があり、一過性のものとして活用されるビラとは性質が異なることから、全面自由化すべきかどうかについてはなお検討を要する。

提言4.専らインターネット選挙運動を行う運動員に対する報酬支払の解禁

【コメント】
選挙運動は無償で行われることが原則であり、例外的に報酬を支払うことができるのは、選挙運動のために使用する事務員(昭和37年公選法改正)、車上運動員(昭和53年同法改正)、手話通訳者(平成12年同法改正)の三者に限られている。

この点、専らインターネット選挙運動を行う運動員(業者)を迎え入れた場合、選挙運動用ウェブサイトや選挙運動用電子メールに掲載する文案を主体的に企画作成させるような場合に報酬を支払うことは買収に該り、候補者等に対する誹謗中傷を監視させるだけの、選挙運動には直接該らない作業の対価として報酬を支払うことは、買収には該らないと解されている。

今回の法改正では、インターネットを活用した選挙運動が大きく注目されることとなり、従前、アナログ型の選挙運動しか経験のない候補者(陣営)が四苦八苦し、インターネットツールを徐々に導入する取組みも、広く知られているところである。専門家による主体的な企画作成がないと、上手くインターネットが活用できない候補者(陣営)がいることも事実である。

我が国においてインターネットは急速に普及し、ITリテラシーも相当程度向上したといえるが、中には、ネット活用の専門家の助言を得ながら、基本的、より効果的なインターネット選挙運動を志向するニーズも潜在的には大きいというべきである。

したがって、専らインターネット選挙運動を行う運動員に対しても、選挙事務員等と同様、人数制限、金額の上限を設けつつ、報酬の支払い対象とし(買収には該らないようにし)、選挙期間中、インターネットに精通した人材を、たとえ短期間であってもうまく活用する方策を執るべきである。

提言5.選挙運動時間規制の撤廃

【コメント】
選挙運動期間中、午後8時から翌日の午前8時まで、街頭演説を行うことができない。過度な選挙運動を抑制しつつ、生活の平穏を確保することが立法趣旨と解されているところである。

この点、ビラやパンフレットの頒布にも制約がかかることになり、午後8時から翌日の午前8時までは、街頭における単なる挨拶行為しか許されないということになる。

しかし、地域によっては、さらに早い時間帯における街頭演説を容認しうるケースもあり、同時に、ビラやパンフレットの頒布も許されるべきである。法律で全国一律に規制すべきではなく、各地域の実情、選挙運動の主体である候補者・政党等の良識に委ねるのが妥当であろう。

提言6.戸別訪問の解禁

【コメント】
戸別訪問禁止規定に関しては、従来から司法判断でも示されているとおり、市民の生活の平穏・プライバシーを確保するため許されると解されている。

しかし、選挙運動期間中には、この戸別訪問禁止規定が存在するために、街宣車を使った「面的」な遊説活動に傾きがちであり、むしろ市民の生活の平穏を害しているという側面がある。これは、エリアの狭い市町村議会議員選挙で顕著であり、複数の街宣車が同じ地域に集中して何度も通りすがるという現象がみられ、苦情につながる例も多々存在する。拡声器を利用したスポット遊説を複数回こなすよりも、戸別訪問のほうが効果的であり、かつ戸別訪問で足りる、と考えられるケースもありうる。

提言3.ではビラの自由化に言及したが、そもそも地域によってビラの内容が異なることもありうるので、その内容に即して、密なコミュニケーションを図ることもできる。
なお今回から、インターネットを活用した選挙運動が自由化されたことにより、候補者の訪問を受けた有権者(第三者)が、そのエピソードを候補者ではなく、有権者の側から広く紹介することも可能となる。

提言7.いわゆる「わたり行為」の解禁
選挙区の候補者が比例区の候補者の選挙運動に「わたる」ことは許されるが、比例区の候補者が選挙区の候補者の選挙運動に「わたる」ことは許されない。前記「わたり行為」の禁止は、衆議院選挙、参議院選挙に共通し、アナログ型選挙運動、インターネットを活用した選挙運動にも通じるものある。

「大は小を兼ねる」という関係で、比例区の候補者が選挙区の候補者の応援行為等、選挙運動を行うことは、事実上の脱法行為につながり、種々の法定上限を無意味にするものであり、一般論としては好ましくはない。

しかし、インターネットを活用した選挙運動が顕著であるように、地域と時間を超える運動態様のものは、そもそもこのような制限規定は意味がない。

また、今回の参議院通常選挙でも、実際に、比例区候補者の街宣車の上に、該当地域の選挙区候補者が並んで立ち、比例区候補者から当選に向けた激励を受けるというシーンが何度も繰り返された。実務上も、禁止規範としてあまり認識されておらず、違反行為がもたらす実害も乏しいことから、アナログ・デジタルを通じて、わたり行為を解禁するべきである。」
posted by 憲法フォーラム at 11:09| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月07日

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